私と深海魚と世界と

おいさんが思うこと、感じてきたこと、色々。

あの、夕暮れの公園の。

ルイゼは中学時代、剣道部でした。

 

剣道といえばそう。あの、道着を着てその上から防具をつけて「小手めーん」とやるやつ。夏は身体中からありえない量の汗が訳わからんくらい出てきて、常時ギブミー水分ってなるやつ。

中学は3分の1ほど通えてなかったので、もちろん剣道も上達せず。試合で勝てたことも無いという。いわゆるエンジョイ勢。なんで剣道部に入ったのか誰にも、そして自分にもわからない。

 

剣道って防具着けてるし痛くないんでしょうとか言われるけどそんなことはない。

めっちゃ痛い。面を叩かれれば目の前は真っ白意識は遠くなり、小手を叩かれれば私の手もげてる?いやついてるついてるセーフセーフってなるくらい痛い。常に涙目。

痛すぎてエンジョイどころじゃなかった。

 

でも、剣道部の子と未だに連絡を取ったりご飯に誘われたりする。私なんてろくに学校にも行ってもなかったのに誘ってくれる。みんな優しい。

 

そんな剣道部に所属していた頃のことで、たまに思い出す情景がある。

あれは中2の頃。

剣道終わりの夕方。公園で同期だけで話をしていた。

その時、急に戦争の話になった。

それまで冗談を言って笑ったりしていたのに、戦争の話になった途端急に雰囲気ががらっと変わって空気が張り詰めだした。

 

もし、戦争になったら。

もし第3次世界大戦が起きたら、私たちも戦争に行かんとあかんな。

剣道部やしな。

そら赤紙来たら行かなあかんわ。

そうやんな。

 

ん。

おかしくない?なんで剣道部やったら戦争に行かないとあかんの。戦時中に竹槍で戦おうとしていたって話なら聞いたことあるけど、そういうことなの?剣道部やし竹刀で戦うってことなの?でもなんで?

ってなはてなマークが頭をぐるぐる回る。

なんでって聞きたい。でもみんなの顔が深刻過ぎて聞けない。夕方の薄暗い感じも相まって、公園の中がどんどんすごい空気感になっていく。

 

口も挟めずブランコに座ったまま固まっていた私は必死に考えた。

もしかしたら。

もしかしたら、私が学校に居ない間(中1の後半)に、政府と学校と剣道部の間でそういう話に。「戦争が起こったら、わかってるよね。」みたいなやり取りが秘密裏にあったのかもしれない。

だからこんな深刻なんか。そうかわかった。戦争行くんか私たち。わかりたくないけどわかった。私剣道めっちゃ弱いねんけど。行っても多分秒で死ぬけど。行くわ戦争。だって私、剣道部やもんな。

という考えに最終的に落ち着いた私は、みんなと共に深刻の中へ。

 

行くしかないやろ、剣道部やねんから。

せやな。

せやわ。ってギュッと竹刀を握りしめる私たち。

そろそろ帰ろか。

うん帰ろ。

 

ってなやり取りをしたことをすごい覚えてる。

これがね、夢やったのか現実やったのか全然わからん。当時アメリカで9.11があって、世間も騒いでたっていうのもあったとは思うんやけど。謎過ぎる。普通に考えたら変な話やし面白いし中二病感満載やねん。

でも、その時の暗い空気感が本当に怖かったんよね。

たまに思い出してはぞわっとする感じ。

 

今もなんか怖くて聞けない。